経営改善に効く商品分析:6分類で利益を伸ばす方法

商品を6つに分類するだけで、経営改善の優先順位はかなり見えやすくなります。まず今日の商品を確保し、余裕ができたら明日の商品へ。さらに力が残る段階で、眠っているシンデレラ商品を発掘します。

━━ この記事の著者 ━━

島田慶資(しまだ けいすけ)|ハンズバリュー株式会社 代表取締役。東北6県の温泉旅館を中心に、経営改善・事業再生のコンサルティングを10年以上実施。支援案件は延べ1万件超、補助金等の累計調達支援額は500億円。認定経営革新等支援機関。東日本大震災、令和元年台風、福島県沖地震などの復旧・再建局面でも、事業者の生活と事業継続を守る支援に取り組む。事業再構築補助金・中小企業成長加速化補助金の採択支援実績あり。

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この記事の結論

商品分析は、売れている商品を眺める作業ではありません。どの商品を守り、どの商品へ資源を移し、どの商品を見直すかを決めるための入口です。

ポイント 1

商品を6分類すると、経営改善の優先順位が見える

ポイント 2

まず今日の商品を確保し、明日の商品へ投資する

ポイント 3

シンデレラ商品は、小さく試しながら育てる

「商品が売れなくなってきた気がする」
「競合が出てきて、販売数量が下がってきている」

このような相談をお客様からいただくことは少なくありません。こうした分析にはSWOT分析やプロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)などさまざまな手法がありますが、私は中小企業経営の実務家である一倉定先生が考案された商品の6分類を好んで使っています。

何より日本語でわかりやすい。横文字のフレームワークに比べて、経営者の方にそのまま説明できるのが大きな利点です。

要点:商品を6つに色分けして分類する。まず「今日の商品」を確保して足場を固め、余裕ができたら「明日の商品」を育て、さらに余裕ができたら「シンデレラ」を発掘する。この順番が大切です。

商品の6分類とは

自社の商品やサービスを、以下の6つに分類します。

分類 状態 とるべきアクション
1. 昨日の商品 かつては主力だったが、売上・利益とも下降中 成り行きに任せ、機を見て縮小・停止する
2. 今日の商品 現在の主力。安定した売上がある まず確保すべき生存基盤
3. 明日の商品 成長中。伸びしろがある 余裕ができたら良質な資源を投入する
4. 不必要な特殊品 ごく少数の顧客のためだけに存在 追加投資を止め、縮小候補にする
5. 経営者の思い入れ商品 数字では正当化できないが、経営者が手放せない 縮小・停止候補にする。最も難しい判断
6. シンデレラ 収益性は高いが、なぜか伸び悩んでいる さらに余裕ができたら資源を投入する

事例:「昨日の商品しか持っていない」会社

以前、ある受注生産型のメーカーの経営改善を支援したときの話です。

この会社は、特定の業界団体向けの定期制作物を長年受注していました。過去には少人数の経営で利益率が高く、十分な売上と利益を確保できていました。しかし近年、受注量が構造的に減少していました。

6分類で分析すると、この定期制作物は明らかに1(昨日の商品)です。業界団体の会員数が今後増える見通しはなく、市場そのものが縮小しています。そしてこの会社には、昨日の商品以外の商品がありませんでした。

社長の言葉

「確かに、新商品の開発もしてこなかったし、新しいお客様も開拓してこなかった。昨日の商品しか持っていないと整理されると、納得するしかない」

しかし、ここからが大事です。この認識がスタートラインなのです。認識がなければ、構造的に売上が減少していくのをただ我慢するだけの状態が続きます。認識できたことで、初めて「では次に何をすればいいか」を考えられるようになります。

社長は「気が少し楽になった。これから考えればいいんだ」とおっしゃっていました。

ステップ1:まず「今日の商品」を取りに行く

昨日の商品しかない状態から、何を狙えばいいのか。ここで注意していただきたいのは、まず狙うべきは「明日の商品」ではなく「今日の商品」だということです。

将来的に発展するであろう新商品の開発は、余力ができてから取り組むべきテーマです。売上が下がっている状況で、まだ市場が見えない新商品に経営資源を投入するのはリスクが大きすぎます。

狙うべきは、現時点でお客様が具体的に「欲しい」と思っている商品やサービスです。

ニーズ

「こういうものがあったらいいな」という漠然とした欲求。まだ具体的な商品のイメージがない状態。

ウォンツ

「その商品が欲しい」という具体的な購買意欲。お金を払う準備ができている状態。

今すぐ狙うべきは、お客様のウォンツがはっきりしている「今日の商品」です。具体的には、同業他社がすでに提供していて、お客様が買っているもの。それを同じ価格帯で、品質をよく、納期を短く、品揃えを豊富にして、同業他社のシェアを奪っていく。これが最も現実的な打ち手です。

先ほどの受注生産型メーカーの場合、同業他社が手がけている制作物のうち、自社の設備と技術で対応できるものを洗い出しました。そのうえで、価格は同程度に抑えつつ、納期の短さと品種の柔軟さで差別化する方向が見えてきました。

ステップ2:余裕ができたら「明日の商品」を育てる

今日の商品で足場が固まり、売上と限界利益が安定してきたら、次は「明日の商品」の開発に取りかかります。明日の商品とは、まだ売上は小さいが成長の兆しがある商品やサービスです。

ただし、明日の商品の開発には時間とコストがかかります。今日の商品が生み出す限界利益で固定費と返済をまかなえている状態でなければ、明日の商品に投資する余裕は生まれません。

順番を間違えないことが大切です。今日の商品を確保する前に明日の商品に手を出すと、資金が続かず共倒れになるリスクがあります。

ステップ3:さらに余裕ができたら「シンデレラ」を発掘する

経営が安定してきたら、自社の商品の中に眠っている6(シンデレラ)を探してみてください。シンデレラは収益性が高いのに伸び悩んでいる商品です。

  • 営業担当がついていない
  • Webサイトに商品ページがない、あっても情報が薄い
  • 在庫が不安定で機会損失が起きている
  • 経営者自身がその商品の価値に気づいていない

シンデレラは、すでに収益性が証明されている商品です。新規開発のリスクがなく、資源を投入すれば伸びる確率が高い。だからこそ、経営に余裕ができた段階で最も効率よく利益を伸ばせる打ち手になります。

分類の実践手順

手順1:全商品・サービスをリストアップする

まず、自社が提供しているすべての商品・サービスを洗い出します。制作物の種類別、取引先別にリストアップし、「とりあえずメニューに載せている」ものも含めてすべて出してください。

手順2:各商品の売上と限界利益を出す

リストアップした商品ごとに、直近1年の売上高と限界利益(売上から変動費を引いた残り)を記入します。変動損益計算書を使い、商品ごとの変動費を把握できると、精度の高い分析ができます。

手順3:推移を見て6分類に振り分ける

売上と限界利益の3年分の推移を見て、各商品を6分類に振り分けます。

  • 3年前より売上が下がっている → 1(昨日の商品)の候補
  • 安定推移 → 2(今日の商品)
  • 上昇傾向 → 3(明日の商品)
  • ごく少数の顧客だけが買っている → 4(不必要な特殊品)
  • 数字は悪いが経営者が「これは大事だ」と言い張っている → 5(思い入れ商品)
  • 利益率は良いのに売上が伸びない → 6(シンデレラ)

最も難しいのは「5. 経営者の思い入れ商品」の判断

4(不必要な特殊品)の縮小に抵抗を感じる経営者は少ないです。しかし、5(経営者の思い入れ商品)の縮小・停止は非常に難しい。

「創業以来ずっと続けてきた」「自分が開発した商品だ」「お客様との約束がある」。こうした思い入れが判断を鈍らせます。

しかし、思い入れだけで利益を生まない商品を残し続けることは、今日の商品や明日の商品から経営資源を奪っているのと同じです。その商品が生み出す限界利益は、投入している人件費・材料費・時間に見合っていますか。見合っていないなら、その資源を今日の商品へ振り向けたほうが会社全体の利益は増えます。

競合の視点も忘れない

商品分析は自社の数字だけでは完結しません。各商品について「競合にやられたら最も困ることは何か」を問いかけてください。

  • 競合がこの商品と同じものを出してきたら、お客様は離れるか
  • 競合がこの価格帯に参入してきたら、利益を維持できるか
  • 自社が休んでいる間に、競合が粛々と継続している分野はないか

「今日の商品」を取りに行く際には、同業他社の商品ラインナップを調べることが出発点になります。先ほどの受注生産型メーカーでも、同業他社が手がけている制作物の種類と価格帯を徹底的に調べることから始めました。

まとめ

  • 全商品を6つに分類する。昨日の商品、今日の商品、明日の商品、不必要な特殊品、経営者の思い入れ商品、シンデレラ
  • まず「今日の商品」を確保して生存基盤を固める
  • 余裕ができたら「明日の商品」を育てる
  • さらに余裕ができたら「シンデレラ」を発掘する
  • 分析の精度は変動損益計算書の商品別データで上がる
  • 分類後のアクションとして、値上げの判断基準赤字部門の撤退判断も参照

旅館・宿泊施設の経営改善支援の詳細は経営改善サポートをご覧ください。

商品別の利益構造を整理したい方へ

商品ごとの役割と利益を見える化し、限られた経営資源をどこに使うべきかを一緒に整理します。

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