電子帳簿保存法では、帳簿や請求書などの保存方法について、紙ではなく電子データで保存するためのルールが定められています。
中小企業や個人事業主が特に注意したいのは、メールやクラウド、Webサイトから受け取った請求書・領収書などの「電子取引データ」です。紙で受け取った書類を必ずスキャンしなければならない、という話とは分けて考える必要があります。
この記事では、2026年5月時点の国税庁公開情報をもとに、電子帳簿保存法の全体像、電子取引データ保存の基本、青色申告65万円控除との関係を整理します。個別の税務判断は、税理士または所轄税務署へ確認してください。
━━ この記事の著者 ━━
島田慶資(しまだ けいすけ)|ハンズバリュー株式会社 代表取締役。東北6県の温泉旅館を中心に、経営改善・事業再生のコンサルティングを10年以上実施。支援案件は延べ1万件超、補助金等の累計調達支援額は500億円。認定経営革新等支援機関。東日本大震災、令和元年台風、福島県沖地震などの復旧・再建局面でも、事業者の生活と事業継続を守る支援に取り組む。事業再構築補助金・中小企業成長加速化補助金の採択支援実績あり。
この記事の結論
中小企業がまず確認すべきなのは、電子で受け取った、または電子で送った請求書・領収書・契約書などを、電子データのまま保存する体制です。紙で受け取った書類のスキャナ保存、会計ソフトの電子帳簿保存、青色申告65万円控除の要件は、それぞれ別の論点として整理しましょう。
電子帳簿保存法の3つの区分
電子帳簿保存法は、大きく次の3つに分けて考えると整理しやすくなります。
| 区分 | 対象 | 中小企業の見方 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフトなどで作成した帳簿や書類 | 任意で利用する制度。優良な電子帳簿の要件を満たすかは別途確認。 |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った請求書・領収書などをスキャンしたデータ | 紙書類を必ずスキャンする制度ではない。利用する場合は要件確認が必要。 |
| 電子取引データ保存 | メール、クラウド、Webサイトなどでやり取りした取引データ | 対象となる事業者は、電子データのまま保存する対応が必要。 |
電子取引データ保存で必要なこと
電子取引データとは、紙でやり取りしていれば保存が必要だった注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、請求書などに相当するデータです。メール添付PDF、クラウド請求書、Webサイトからダウンロードする領収書などが該当します。
ポイントは、電子で受け取ったものだけでなく、電子で送った取引データも保存対象になることです。保存形式はPDFだけに限られませんが、税務調査時に確認できる形で整理しておく必要があります。
どこに保存するか
共有フォルダ、会計ソフト、クラウドストレージなど、保存場所を決める。
どう探せるようにするか
日付、金額、取引先で確認できるよう、ファイル名や索引を整える。
改ざん防止をどうするか
事務処理規程、タイムスタンプ、履歴が残るシステムなどから実務に合う方法を選ぶ。
紙で受け取った書類との違い
紙で受け取った請求書や領収書は、電子取引データではありません。紙書類をスキャンして保存する制度はありますが、電子取引データ保存とは別の区分です。
そのため、まずは「電子で来たものは電子のまま保存する」「紙で来たものは紙保存かスキャナ保存かを社内で決める」と分けて運用すると、経理の混乱を減らせます。
青色申告65万円控除との関係
個人事業主の青色申告特別控除は、電子取引データ保存に対応しただけで自動的に65万円になるものではありません。国税庁の案内では、一定の帳簿要件を満たすことに加え、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存などの要件が関係します。
ここは誤解が起きやすいところです。65万円控除を目的に対応する場合は、電子取引データ保存とは別に、青色申告制度の要件を税理士または税務署に確認してください。
中小企業が今日から決めること
- 電子で受け取る請求書、領収書、契約書、見積書の保存場所を決める。
- メール添付、クラウド請求書、ECサイト領収書、スマホ決済明細など、社内で発生する電子取引を洗い出す。
- 日付、金額、取引先が分かるファイル名や索引ルールを決める。
- 訂正・削除のルール、担当者、保存期限を社内規程として残す。
- 会計ソフトやクラウドストレージを使う場合は、税務調査時にデータを出せるか確認する。
- 判断に迷う場合は、税理士または所轄税務署に確認する。
出典・確認資料
国税庁「電子帳簿保存法関係」「電子取引関係」「No.2070 青色申告制度」「優良な電子帳簿の要件」を確認し、中小企業向けの実務整理として記載しています。最終確認日: 2026年5月30日。
