週刊島田慶資 再開第4号|広告費を増やしても集客が増えない本当の理由

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次回: 6月20日(土)10:00〜12:00「当たり前」の棚卸しワークショップ(Zoom)

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島田の独り言

山形県中小企業家同友会「経営指針をつくる会」の新シーズンが始まりました。財務分析の助言役をいただいています。昨年12月に開発した財務分析ツール「ミライストラクチャー」が助言に活きており、本当に作ってよかったと実感しています。開発にご協力くださった3社の皆様、ありがとうございます。新しい受講生の皆様のやる気に、こちらも元気をもらいました。

うちの坊やが初めてお友達のおうちにお泊まりしました。保育園時代の親友ですが、小学校は別々になったので、積もる話もあったようで大変盛り上がったと聞きました。お世話になったご両親には感謝です。成長を感じます。

うちの坊やがYouTubeでギャグアニメを見て笑っていました。ギャグが理解できるようになったのは知能が発達している証拠。さらに、妻が隠していたポリンキーを椅子を台座にして棚から引っ張り出して食べていました。こちらも成長を感じます。

島田の気になるニュース

❶ 【祝90万再生】やはり国債は国民の借金ではない(クレディ・アグリコル証券 会田卓司氏)

高市早苗総理の経済ブレーンである会田氏の見解です。僕が評価するのも恐縮ですが、経済学として正しい認識です。一方で日本経済新聞は「国債費は29年度に41.3兆円」と不安をあおる記事ばかり。財務省の言いなりと言われていますが、その通りですね。ぜひYouTubeをご覧ください。

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❷ 国土交通省提供の『地理空間MCP Server』を使ってClaudeから地理空間情報を連携してみた

実際に試してみました。生成AIが行政機関のデータを扱えるようになるのは大変面白いです。土地の価格やハザード情報を調達できるので、新規出店のお客様ご支援に活用できるかもしれないと考えています。統計局の情報も開放してほしいなぁと思う次第です。

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❸ 「早く仕上げるほど売上は減る」富士通・時田社長が語るSIerが人月の通用しない時代で稼ぐ方法

日本のIT分野の悪しき風習の元凶ではないかと考えます。2000年代にITの新しい仕事ができた時に建築業から見積もりの方法を持ってきたとうかがっています。この令和の時代でもITの見積もりは人時で計算。変われないのでしょうか。

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常識: 広告費を増やせば、集客は増える

逆転: 広告費を増やしても集客が増えないのは、刈り取る畑の面積が縮小しているから

島田慶資の逆転思考

— 不利な条件を武器に変えた経営者の物語

皆さんこんにちは。変革者作家の島田慶資です。
「逆転思考」のお時間です。

今回のテーマは、広告費です。

「これ以上、何にお金をかければいいんでしょうか」

ある地方の工務店で、社長と営業担当の方とお話をする機会がありました。

その工務店は、ポータルサイトの広告、リスティング広告、SNS広告、見学会の集客。やるべきことは、ほとんどやっておられました。ウェブの施策を見せていただいた率直な感想は、「非常に理にかなったマーケティングをされている」というものでした。

ところが、問い合わせは伸びていません。むしろ、前年より減っている。

営業担当の方が、こうおっしゃいました。

「同業他社も、同じ打ち手をしているんです。無料資料請求も、見学会特典も、リスティングも、口コミ施策も。どこもやっている。だから差がつかない。何か違う切り口があれば教えていただきたいのですが」

僕には、答えのおおよその見当はついていました。

ただ、コンサルティングの現場では、答えを先に申し上げてしまうと、ほとんどの場合うまくいきません。「島田さんがそう言うなら」で始まった施策は、現場で続かないからです。

ですから僕の仕事は、答えを言うことではなく、経営者が答えにたどり着くための問いを、適切な順番で置いていくことです。

その日の議論は、長い時間に及びました。モデルハウスを見学させていただきながら、現場を回りながら、事務所に戻ってから。行ったり来たりしました。

ここでは、長い議論の中から、振り返ると転換点になった三つのやりとりを抜き出してご紹介します。

一つ目 ― 「ポータルサイトさんは、そのやり方をやめられますか?」

最初に、こうお聞きしました。

「御社がメインで使っておられるポータルサイトさんは、御社だけを特別扱いしてくれますか?」

社長は、少し考えてから答えられました。

「無理ですね。どの会社も同じフォーマットで横並びですから。坪単価があって、外観写真があって、設備の仕様があって。その中から比較して選んでもらう仕組みで成り立っていますから」

しばらく沈黙がありました。

そう、横並びの比較は、ポータルサイトの選択肢ではなく、動かせないビジネスモデルだったのです。

横並びにされる以上、施工の品質が良くても、職人の技術が優れていても、住んだ後のアフターフォローが手厚くても、画面の上では全部フラットに並びます。しかも、掲載を続けるための広告費は年々上がっていく。

つまり、ポータルサイトに広告費を注ぎ込むほど、相手の土俵で、相手のルールで、相手の制約の中で戦い続けることになります。

広告費を増やしても集客が増えない。これは、努力が足りないのではなく、構造の問題だったのです。

二つ目 ― 途中、話題がそれたところから見えたもの

議論の途中、営業担当の方がふと、こうおっしゃいました。

「そもそも家を建てる人自体が減っているんです。賃貸でいい、中古でいいっていう人が、若い世代に結構多くて」

僕はそのまま、一つだけ聞きました。

「その方々は、安かったら建てますか?」

営業担当の方は、一瞬動きを止めて、こう答えられました。

「……建てないと思います。安いから建てる、っていう話じゃないんですよね」

ここが、二つ目の転換点でした。

値引きも、特典も、無料見学会も、ウェブでの顧客獲得とは非常に相性が高い。わかりやすいですし、すぐに数字が出る。だから皆さん使われます。

ところが、安くても建てない人に、安さで訴えても動かない

これは当たり前のように聞こえますが、広告費の議論をしているときには、意外と見えなくなります。「もっと魅力的なプランを」「もっとお得感を」と走り出すと、その延長線上に答えがあるように感じてしまう。でも、値引きでは動かない層が存在する以上、値引きの精度を上げても、その層には永遠に届かないのです。

三つ目 ― 「新築の家を見たことはありますか?」

議論も後半に入った頃、最後の問いを置きました。

「家を建てないと決めている方々って、新築の住宅を実際に見に行った経験は、どのくらいあるものなんでしょう」

社長がぽつりと答えられました。

「……ないんでしょうね。見学会に来ない人は、そもそも見に来ないですから。見たことがなければ、建てたいとは思わないですよね」

この瞬間、事務所の中の空気が変わりました。

新築を見る機会が減る。すると関心が薄くなる。関心が薄くなると、ポータルサイトの打ち手も効かなくなる。さらに関心が薄くなる。

悪循環です。

そして、この悪循環は、広告費を増やしても止まりません。広告は「関心がある人を刈り取る」装置であって、関心そのものを生み出す装置ではないからです。

ここで、構造が見えてきます。

広告費を増やしても集客が増えない本当の理由は、「広告が届く相手の数」が構造的に減っているからです。刈り取る畑の面積が縮小しているのに、刈り取る鎌を大きくしても、収穫量は増えません。

では、どうするのか。

畑を耕す側に回るのです。

そして、別の力を持ってくる

その日の議論を通じて、社長と営業担当の方の中から、一つの方向性が見えてきました。

「広告を減らすにしても、減らした分を何で補うかの設計がないと、ただ数字が落ちるだけですよね」

社長のこの一言が、改革の出発点になりました。

翌週から、検討が始まったのは三つの方針でした。

ひとつ目は、「広告で刈り取る層」と「そもそも関心を持っていない層」を分けて考えること。今のウェブ施策は前者に最適化されており、すでによく機能している。問題は後者に対して何もしていないことだ、という認識の整理です。

ふたつ目は、「メディアに取り上げてもらえる仕掛けを持つ」こと。広告は買うもの。でも、取材は「仕掛ける」もの。テレビや新聞のウェブ媒体に載れば、指名検索が増え、広告に頼らない流入が生まれます。

みっつ目は、「需要を創る活動に着手する」こと。これが今回の話の核心です。

実は、僕の知人で、南会津で工務店を営んでいる方がいます。南会津 … 大変な山奥です。そこでYouTubeを始められた。「大手メーカーの建材は使うな」なんて過激な発言をされたりして、誰が見るんだと思いました。ところが、実際にそこから集客できている。

なぜか。同業他社がやらない切り口で、自分の言葉で発信しているからです。ポータルサイトでは横並びにされてしまう工務店が、YouTubeでは「この人の考えで家を建てたい」という選ばれ方をされている。

ポータルサイトの土俵を降りて、別の力を持ってきたのです。

不利だと思われていた「ポータルサイトに依存している」は「だからポータルの外に出れば、誰も追いかけてこない」という自由に反転しました。

不利だと思われていた「値引きでは動かない層がいる」は、「だから値引き以外の理由で選んでもらえれば、価格競争から抜け出せる」という強みに反転しました。

不利だと思われていた「そもそも関心がない人が増えている」は「だから関心を生み出す側に立てば、その市場を独占できる」という可能性に反転しました。

事実は、何ひとつ変わっていません。
変わったのは、その事実の読み方と、そこから導かれた方針だけです。

振り返ってみて

その日、僕が口にしたのは、三つの問いだけです。

  • ポータルサイトは、そのやり方をやめられるのか
  • 家を建てない人は、安かったら建てるのか
  • 新築の住宅を、見に行ったことはあるのか

どれも、当たり前のように聞こえる問いかもしれません。
ただ、当たり前の問いを、適切な順番で、適切なタイミングで置けるかどうかが、現場では決定的になります。

広告費を増やしても集客が増えない。

この悩みは、住宅業界に限った話ではありません。旅館も、飲食店も、士業事務所も、同じ構造を抱えています。成熟した産業では、皆が同じ打ち手をする。だから差がつかない。差がつかないから、もっと広告費をかける。そしてCPAが悪化する。

その土俵で戦い続ける限り、この循環は止まりません。

別の力を持ってくる。畑を耕す側に回る。

変革は、いつもこの問いから始まります。

僕たち外部の人間の仕事は、経営者ご自身が答えにたどり着くための問いを、適切な順番で置いていくことです。答えはいつも、経営者ご自身の中にあります。僕たちは、その場所を、問いを通じて指さしているだけなのです。

次回も、現場で出会った「逆転」の事例をお届けします。

変革者作家・島田慶資

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