DDS・DESは、借入返済に行き詰まりかけた温泉旅館が、財務体質を抜本的に見直すときに検討される金融手法です。
ただし、どちらも「借金が簡単に消える方法」ではありません。金融機関との合意、実現可能な改善計画、経営者の説明責任がそろって初めて検討できる選択肢です。
この記事では、DDSとDESの違い、温泉旅館で検討される場面、使う前に確認すべき注意点を、経営者向けに整理します。
━━ この記事の著者 ━━
島田慶資(しまだ けいすけ)|ハンズバリュー株式会社 代表取締役。東北6県の温泉旅館を中心に、経営改善・事業再生のコンサルティングを10年以上実施。支援案件は延べ1万件超、補助金等の累計調達支援額は500億円。認定経営革新等支援機関。東日本大震災、令和元年台風、福島県沖地震などの復旧・再建局面でも、事業者の生活と事業継続を守る支援に取り組む。事業再構築補助金・中小企業成長加速化補助金の採択支援実績あり。
この記事の結論
DDSは借入の条件や順位を変えて返済負担を抑える手法、DESは債務を株式などの資本に振り替える手法です。温泉旅館で検討する場合は、金融手法そのものよりも、返済原資をどう作るか、利益改善をどう実行するか、金融機関に何を合意してもらうかが重要です。
DDSとDESの違い
| 手法 | 概要 | 経営者が見るポイント |
|---|---|---|
| DDS | 既存債務を別条件の債務へ切り替える。劣後ローン化などが代表例。 | 返済負担を抑えた期間に、利益と資金繰りを立て直せるか。 |
| DES | 債務を株式などの資本へ振り替える。 | 株主構成、経営権、税務、既存株主への影響を整理できるか。 |
DDSが検討される場面
DDSは、既存借入の返済負担が重く、このままでは改善投資や運転資金に回せない場合に検討されます。債務そのものを消すのではなく、返済順位や返済条件を変えることで、再生計画を実行する時間を作る考え方です。
温泉旅館では、コロナ禍の借入、設備更新の遅れ、修繕負担、人件費上昇、エネルギー価格上昇が重なり、通常返済だけでは資金繰りが詰まることがあります。その場合、DDSは資金繰り改善の選択肢の一つになります。
DESが検討される場面
DESは、債務を資本に振り替えることで、負債を減らし、自己資本を厚く見せる効果が期待される手法です。ただし、株式や経営権に関わるため、DDSよりも慎重な検討が必要です。
中小企業や家族経営の旅館では、株主構成、相続、金融機関との関係、税務上の取り扱いが複雑になりやすいため、税理士・弁護士・金融機関を交えて検討します。
使う前に確認したいこと
DDSもDESも、金融機関の理解なしに単独で進められるものではありません。返済を軽くした後に何を改善するのか、数字で説明できることが前提です。
温泉旅館で特に確認すべきこと
- 客室稼働率、客単価、食材原価、人件費、水道光熱費の改善余地。
- 修繕投資や設備更新を先送りしすぎていないか。
- 温泉利用権、土地建物、担保、保証の状況。
- OTA依存、直販比率、口コミ評価、リピート率。
- 家族経営の場合、後継者と経営権の整理。
- 返済条件を変えた後の資金繰り表と返済出口。
金融機関と進める手順
- 直近試算表、資金繰り表、借入一覧を整理する。
- 返済が詰まる時期と金額を明確にする。
- 利益改善の打ち手を、売上・原価・人件費・固定費に分ける。
- メインバンクへ早めに相談し、支援の方向性を確認する。
- DDS・DES・条件変更・追加融資などを比較する。
- 実行後のモニタリング指標を決める。
出典・確認資料
金融庁「知ってナットク!中小企業の資金調達に役立つ金融検査の知識」「融資に関する検査・監督の考え方と進め方」、日本政策金融公庫の民間金融機関連携・資本性ローン関連情報を確認し、温泉旅館向けの実務整理として記載しています。最終確認日: 2026年5月30日。
温泉旅館の資金繰りと金融機関対応を整理します
DDS・DESを検討する前に、資金繰り表、改善計画、返済出口、金融機関への説明資料を整えることが重要です。旅館の実態に合わせた再生計画づくりを支援します。
