事業再生の入り口!金融機関等が実行する面談前の調査レポートの策定

【2024年2月24日 更新】大幅リライトしました。

こんにちは、ハンズバリュー株式会社の津名久ハナコです。

最近は、爽やかな日が続き、自転車通勤が一層楽しくなっています。
さて、今日は事業再生における「調査レポート」の重要性についてお話ししたいと思います。

■ 事業再生のスタートライン

事業再生のプロセスは、一見複雑で不透明に感じるかもしれませんが、実はその入り口にある「調査レポート」が非常に重要な役割を果たしています。

当該レポートは、事業再生を成功に導くための最初のステップであり、金融機関が事業者の現状を深く理解するために策定されます。

多くの場合、特に本腰を入れて事業再生に取り組む金融機関では、この調査レポートを作成することで、事業者の抱える問題や潜在能力を明らかにし、具体的な改善策を立案します。
地方銀行などではあまり見かけませんが、それだけに調査レポートを作成する機関は、事業再生に真剣に取り組んでいると言えるでしょう。

「調査レポート」は、事業再生計画の実現可能性を確認するためのもので、再生チームが中心となって作成します。
このチームは、覆面調査という形で、一般のお客様として事業者を訪れ、サービスを体験することで、リアルな現場の声や状況を捉えます。
このような取り組みを通じて、事業再生計画に書かれている内容と実際の現場とのギャップを見つけ出し、より現実に即した再生計画を策定することが可能になります。

調査レポートの重要性は、単に事業者の現状を把握するだけでなく、その情報をもとに、未来に向けた実行可能な計画を立てるための基盤を作ることにあります。

これは、事業者にとっても、支援を行う金融機関にとっても、貴重な機会となり、長期的な視点での事業の持続可能性を高めることに繋がります。

このステップを踏むことで、事業再生はより具体的で実現可能なものへと進化し、事業者は再生への道を切り開くことができるのです。

つまり、調査レポートは事業再生のスタートラインであり、その重要性は計り知れません。

■ 調査レポートとは?

調査レポートとは、簡単に言うと、事業再生に向けた具体的な第一歩です。
このレポートの作成過程では、金融機関の再生チームが、事業者の実際のサービスを匿名で体験し、その体験を基に詳細なレポートを作成します。

ここでのポイントは、事業者に対する事前のアナウンスは一切なく、一般のお客様としての体験を通じて、公平かつ客観的な情報を収集することです。

この覆面調査は、事業再生計画に書かれている内容と、実際のサービスや商品の質、スタッフの対応など、現場での実態とのギャップを見つけ出すために行われます。
例えば、再生計画で主力とされている商品やサービスを実際に注文し、その品質や顧客対応を評価します。
計画に書かれている売上目標やコスト構造が現実的かどうか、また、顧客満足度を高めるための改善点はないかなど、重要な情報を得ることができます。

特に注意すべき点は、この調査は男性1名で行われることが多い※ということです。
※弊社の経験上。これは金融機関の予算の関係もあるかもしれません…。
温泉旅館などの場合、男性1人の予約は少々違和感があるかもしれません。
しかし、このような細かい点も含めて、事業者の対応能力を試す一環となっているかも?

調査レポートの目的は、単に問題点を指摘することではありません。
むしろ、事業者と金融機関が情報を共有し、実現可能な改善策を一緒に考えるための基盤を作ることにあります。
このプロセスを通じて、事業者は自社の強みを再認識し、弱点を改善する機会を得ることができます。
金融機関は、支援対象となる事業の真のポテンシャルを理解し、より具体的かつ効果的な支援策を提供することが可能になります。

調査レポートは、事業再生計画の「現実味」を探るための重要なツール。
このレポートを通じて、計画の実行可能性を高め、事業者と金融機関が共に目指す成功に向けた一歩を踏み出すことができるのです。

■ 覆面調査の実態:再生チームが行う意外な手法

調査レポートが事業再生計画の現実味をどのように探るかについては上述しました。
その一環である「覆面調査」に焦点を当てたいと思います。

覆面調査と聞くと、ちょっとドラマチックに感じるかもしれませんが、実際には事業再生のプロセスで非常に有効な手法として使われているんですよ。

覆面調査は、事業再生チームによって行われることが多く、その目的は非常にシンプルです。
つまり、一般のお客様として事業者のサービスを体験し、その過程で得られる直接的な情報をもとに、事業の現状を評価すること。

この方法で、再生チームは事業者が提供するサービスの質、スタッフの接客態度、店舗の清潔感など、実際の顧客体験をリアルに把握することができます。

さて、覆面調査の実態についてですが、一般に想像されるような「スパイ活動」ではなく、実はもっと地に足のついた活動なんです。
調査員は、一般的に若手の男性行員が選ばれることが多いです。
理由は、役職者などでは顔が知られている可能性があり、覆面としての役割を果たせないからです。

調査員が訪れる際には、特に再生計画で主力とされている商品やサービスを体験します。
これにより、事業再生計画に書かれた内容が実際の運営でどのように反映されているかを確認することができます。
例えば、再生計画で高い顧客満足度を目指している場合、そのサービスが実際に顧客の期待を満たしているかどうかを、この覆面調査で評価するわけです。

こうした覆面調査は、事業者にとっても有益なフィードバックを提供します。
なぜなら、日々の業務に追われていると、自社のサービスを客観的に評価することが難しくなるからです。

覆面調査を通じて得られる第三者の視点は、事業改善のための貴重な情報を提供し、より良いサービスへの改善を促すことができます。

最後に、覆面調査は事業再生の過程で重要な役割を果たしますが、それ自体が目的ではありません。
調査結果は、事業再生計画の改善や修正のための参考資料として使用されるべきものです。

事業者の皆さんが、この覆面調査を「監視」ではなく、「支援の一環」として捉え、建設的なフィードバックとして受け入れることができれば、事業再生への道は一層明るくなるでしょう。

■ 調査レポートの内容とその目的

覆面調査から得られた情報をどのように調査レポートに反映し、それがどのような目的を持っているのかを掘り下げていきたいと思います。

調査レポートは、事業再生のプロセスにおいて中心的な役割を果たします。
このレポートの主な目的は、事業再生計画の蓋然性を確認し、必要に応じて計画の修正や改善策を提案することにあります。
レポートの内容は、覆面調査を含む様々な情報収集活動に基づいており、その精度と詳細さが事業再生の成功に直結します。

では、調査レポートには具体的にどのような内容が含まれるのでしょうか。
一般的には、以下のポイントが重要視されます。

→ 数値計画と現実との差異:レポートの冒頭では、事業再生計画に記載されている数値目標と、実際の運営状況とのギャップが分析されます。例えば、計画で掲げられた売上目標が15%以上も乖離している場合、その原因を探り、改善策を提案することが求められます。

→ コスト構造の検証:原材料費や人件費など、コスト面での問題点を指摘し、より効率的な経営が可能かどうかを評価します。たとえば、原材料費が予算を大きく上回っている場合、調達方法の見直しやコスト削減の提案がなされることがあります。

→ サービス品質と顧客満足度:事業者が提供するサービスの品質や、それに対する顧客の評価も重要なチェックポイントです。特に、覆面調査を通じて得られた情報は、サービス改善のための具体的なヒントを提供します。

→ 外部評価との比較:例えば、宿泊業の場合、じゃらんなどの予約サイトでの評価が事業再生計画とどの程度合致しているかを分析し、改善の余地があるかどうかを検討します。

調査レポートの作成は、事業者にとって厳しい指摘を受ける場面もありますが、その目的は事業者を罰することではなく、事業の健全な再生と成長を支援することにあります。

調査レポートを通じて指摘された問題点は、改善すべき課題と捉え、具体的なアクションプランを立てるきっかけにすることが重要です。

調査レポートが経営に与える影響

調査レポートが完成すると、その内容は事業再生に関わる多方面に影響を与えます。
調査レポートが経営に与える影響について、特に「内部資料としての役割」と「利害関係者との関わり方」の2つの観点からお話しします。

内部資料としての役割

調査レポートは、まず第一に、経営陣や再生チームの内部資料として重要な役割を果たします。
このレポートには、事業の現状分析、問題点の指摘、そして改善のための提案が詳細に記載されており、事業再生計画の修正や新たな戦略立案の基礎資料となります。

レポートは、経営陣が自社の状況を客観的に把握し、必要な対策を講じるための「鏡」とも言えます。
特に、覆面調査によって得られた生の顧客体験は、経営陣が普段接することのできない貴重な情報源となり得ます。

サービスの質の向上、コスト構造の改善、顧客満足度の向上など、具体的なアクションプランを立てる際の重要な指標となります。

利害関係者との関わり方

調査レポートは、事業再生に関わる外部の利害関係者にも大きな影響を及ぼします。
サブの金融機関や信用保証協会など、事業の将来に関心を持つ様々なステークホルダーが、このレポートを通じて事業の実態を理解し、その支援の方針を決定します。

例えば、金融機関は調査レポートを評価し、追加融資や債務の再編など、事業再生を支援するための具体的な措置を決定する場合があります。

ここで重要なのは、調査レポートが直接的に経営に影響を与えるわけではないということ。

レポートはあくまで情報提供のツールであり、その情報をどのように活用し、実際の経営改善に結びつけるかは、経営陣の判断と行動にかかっています。
したがって、調査レポートは、経営陣が主導的に取り組む事業再生の一環として、建設的に活用されるべきものです。

調査レポートが経営に与える影響は大きく、それをどのように捉え、活用するかが事業再生の成功に直結します。

経営陣はこのレポートを真摯に受け止め、事業の持続可能な成長へとつなげていく必要があります。

■ まとめ:調査レポートをどう捉え、どう活用するか

調査レポートは、事業再生において非常に重要な役割を果たしますが、その影響は直接的ではなく、むしろ間接的なものであることを理解することが重要です。

調査チームが作成するこのレポートは、主に内部資料として活用され、事業再生プロセスにおける意思決定の基礎となります。
つまり、直接的に経営に影響を与えるわけではありませんが、間接的には事業の方向性や戦略を大きく左右する可能性があります。

調査レポートが経営に与える間接的な影響には、再生チーム以外の利害関係者に情報が提供されることが含まれます。
事業再生計画、試算表、そして調査レポートの3つは、関係者間で評価され、支援方針の大枠が決定される重要な資料となります。
事業者自身が直接関与しない場でも、事業の未来に大きな影響を及ぼすことを意味します。

この点を踏まえると、調査レポートを作成する金融機関は、事業者の成功に真摯にコミットしていると言えます。

レポートの存在を知った際には、それを恐れるのではなく、「応援してくれている」と前向きに捉えることが大切。

また、地方銀行のようにリソースが限られている場合、調査レポートが作成されないこともあります。
そのような状況では、自ら改善点をまとめ、提案することで、より良い印象を持ってもらえる可能性があります。

調査レポートの活用方法としては、以下のポイントを心がけることが重要です。

  1. 積極的な受け止め方:調査レポートは、事業の改善と成長を促すための貴重なフィードバックです。その内容を積極的に受け止め、実用的な改善策に繋げていきましょう。
  2. 内部での共有と議論:レポートの内容をチーム内で共有し、問題点や改善策についてオープンな議論を行うことが、組織全体の改善に繋がります。
  3. 利害関係者とのコミュニケーション:調査レポートを利害関係者と共有し、事業再生に向けた理解と支援を求めることも一つの戦略です。

調査レポートを正しく理解し、その情報を事業改善に活かすことで、事業再生の道のりはより明るく、確実なものになるでしょう。

本日も良い学びを。
ハンズバリュー株式会社の津名久ハナコでした。

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