注意:この物語はフィクションであり、架空の設定・登場人物・シチュエーションを使用しています。ハンズバリュー株式会社の経営支援のスタイルや考え方を分かりやすく伝えるためにショートストーリー形式で表現しています。
山形県と福島県で新卒採用のコンサルティングを行っているハンズバリュー株式会社、コンサルタントの津名具ハナコです。
今回はラーメン屋さんの支援②です。①はコチラから。
よーし、頑張るぞ!!
前回のまとめ
「し、止血!?」思わぬ言葉に、店主は驚きの表情だ。
「はい、まずは赤字の原因を洗い出して、止血することが大切です。」
微笑みながらハナコは続ける。
「売上拡大の打ち手は、実行から効果が現れるまでに時間がかかることが多いです。即効性を期待するならディナー営業を始めるという選択肢もありますが、こちらはご夫婦お二人で運営されているお店なので、負担が大きいためお勧めしません。身体を壊してしまっては、何のために仕事をしているのか分かりませんから」
上司・勝瀬ヒデコからの補足
経営状態が悪化した時は、まず「止血」を行うことが多いわ。その方が、即効性があって効果的だからね。「止血」とは、いわば「財布の出血を止めること」。余計な出費をカットすることで、収支バランスの改善を狙うのよ。例えば、無駄な電気代や長時間勤務で増える残業代など、無駄な出費を抑えることで、赤字の原因を減らせるわけ。止血を行うことで、経営の健全化を図ることができるわ。
売上を増やすためには、客単価アップか客数アップを目指すことができるけど、どちらも不確定要素が大きいわよ。商品を増やしてみても、売れる保証なんてどこにもないし、手間暇もかかるし、仕入れ費用や諸経費も増えるわ。だから、まずは節約をすることよ。
ハナコは、空っぽになったラーメンどんぶりをカウンターに戻し、スケッチブックを取り出すとアイデアをまとめ始めた。
「まず赤字の原因になっているのは、高騰している電気代です。しかし、無理に節電してお客様の居心地が悪くなってしまっては逆効果です。まずは電力料金の契約を見直しましょう。すみません、請求書や領収書などを見せてもらえますか?」
店主たちはレジの下から段ボール箱を取り出して、電気代の請求書を探し始めた。
「絶対に捨てていないはずなんだけど…。あ、あったあった。津名久さん、これだ」
2022年11月、12月、2023年1月の請求書がまず見つかった。手渡された請求書を見て、ハナコは息をのむ。
「貴社の電気使用量で10万円を超える請求はすでに高額だと思いますが、1月は15万円に値上がりしています。新電力で契約されていますね。うーん…提案書や見積書でもいいので、契約内容がわかるものはありますか?」
店主たちは頭を抱えた。
「やっぱり高いのか…。数年前に電話で営業を受けて、東北電力から切り替えたんだよ。それをそのままにしてたんだ…。書類なんか残ってるかなあ…」
「そうですよね、時間も経ってますものね。でも、何か手を打たなければ高額な電気代が経営を圧迫し続けることになります。今後、更なる電気料金の値上がりも報道されています。相見積もりを取ってみて安くなるか検討しましょう」
ハナコは店主たちを安心させるよう、穏やかな口調で提案した。
上司・勝瀬ヒデコからの補足
今、電気代が異常な値上がりを見せているわね。そんな中、節約したいと相談が増えているの。簡単な電気料金の見積もりサイトもあるけど、詳細な契約内容を確認しないと、安くしようと思っても結局高くつくこともあるわよ。電気使用時間帯や季節によって料金が変動するから、自社の使用状況にあったシミュレーションが必要だわ。契約前にはしっかりと相談することが大事よ。
店主たちも落ち着きを取り戻したようだ。そして少し考えた後に、「津名久さん、私たちと一緒に契約の見直しを行っていただけませんか?」と改まって告げた。
「もちろんです。そのために私がいます」ハナコは力強く頷いた。
さらにハナコはてきぱきと試算表や決算書も確認し、無駄な支出は確認できなかったという結果を伝えると、店主たちは安堵した様子だった。
「まずは電気代を削減することが経費削減の第一歩になりますね。原材料費を節約するとラーメンの品質に影響してしまう可能性がありますし」
「もちろんラーメンの味を落とすつもりはないよ。そうだな、まずは電気代だな。電力会社に相見積もりを依頼してみるよ。止血をして様子を見る、でいこう」
「ただ、新型コロナウイルス感染症の影響もありますから、劇的な改善には時間がかかると思われます。そのため、追加の資金調達も並行して考える必要がありますね」
店主たちは真剣な表情で一つ一つ頷いている。
「まだ新型コロナ特別融資の制度は継続しています。追加で融資をお願いできるか、元気銀行の長谷川さんに相談してみてください。事業計画書が必要になりますが、もちろん私がサポートします」
ハナコは力強く続ける。
「可能であれば、借り換えをして前回の借入にニューマネーを加えて資金調達することも検討してみましょう。据え置き期間は設定せずに、薄く長く返済すると負担を軽減できますよ。ただし、しっかりと返済計画を立てる必はありますが」
店主たちは熱心に耳を傾け、慎重に考えているようだ。ハナコが店主たちを後押しするように
「私たちも全力でサポートします。一緒に頑張りましょう」
と言うと、店主たちも意を決したようだ。
「津名久さん、ありがとう。やっぱり追加の資金調達は必要だな。ただ、それを返済するためにはやっぱり売り上げを増やさないといけないな。私たち夫婦は年齢的にも体力が不安だから、営業時間や稼働日を増やす作戦(客数アップ)は難しいとなると…」
ハナコは店主の言葉に深く頷き、力強く宣言した。
「値上げ一択でしょう!」
「でも、うちはこれまでずっと同じ価格で営業を続けてきたんだよ。いきなり値上げしてしまうと、お客様にご迷惑をおかけしてしまう…」
と、店主は心配そうだ。
ハナコは真剣な顔で応じる。
「そうですよね。もちろん値上げは簡単なことではありません。ですが、原材料費は確実に上がっています。このままでは、いずれお店の営業を続けること自体が困難になってしまいます」
「それはそうだが…」
「大丈夫です。お客様にご満足いただける方策を一緒に考えましょう。例えばサイズを大きくするとか、味噌ラーメンと醤油ラーメンの値段差を縮めるとか、いろいろなアプローチが考えられますよ」
店主たちは、ハナコのアドバイスに少し安心したようだ。そして、値上げをすることを決意し、改めて戦略を練り始めた。