週刊島田慶資|総括という名の前進

皆様、こんにちは! ハンズバリュー株式会社の島田です。

※社内で回覧していただいているお客さまがいらっしゃいました。ありがとうございます!!
著作を明記していただけるのであれば、自由に配布ください。

変革者の円卓会議、第2回を開催します。経営者同士で学び合う場です。
次回(第2回): 7月11日(土)10:00〜15:00/山形市・対面
詳しくはこちら・体験のご相談も

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[ 独り言コーナー ]

❶ 変革者の円卓会議、記念すべき第1回が無事に完了しました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございます。逆風を追い風に変える経営者の物語。そして、その続きを一緒に描いてくださる参加者の皆様。7月のセッションでは、具体的な経営戦略を持ち帰っていただける場にします。

❷ 先週お話しした出退勤アプリの続きです。「有休や残業の申請が楽になればいいかな」くらいの気持ちで作り始めたら、有休計算が複雑、残業や早退・遅刻の判定も複雑。よくこれを人力でやっていたなと驚きました。「こんなに大変なシステムになるとは」とAIにこぼしたら、「いままで複雑だったものが、可視化されただけですよね」と。……たしかに。

❸ 坊やが音読をできるようになって、驚いています。1年前は「あいうえお」を見ながら読んで感動していたのに、今では難しい字もすらすら読めるようになっている。算数の足し算・引き算も始まりました。学ぶことが指数関数的に増えていくのだなと驚かされます。ただ、学力も大事ですが、それだけでは測れないものも多い。いろんな学びの中から、自分の道を見つけてほしいと願っています。

[ 島田の気になるニュース ]

旅行者の83.5%が旅館の夕食で「残すことにストレス」 — 当社アンケートが旅行新聞に掲載
旅行新聞に当社のアンケート結果を掲載いただきました。86.2%が「適量+特典」を支持しています。1年間、パブリシティーに本気で取り組み、ヤフーニュースやテレビ、専門誌にも取り上げていただけました。概ね予算感もつかめたので、当社の支援にも活かしていきます。
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OpenAIも注目 — 北海道の非エンジニア農家がCodexで進める「農業のDX」
NVIDIAのファンCEOが「C++を使えるのは人類の2%だったが、生成AIで全員がソフトウェアを開発できるようになった」と語っていました。農家とは相性がいいでしょうね。ラズベリーパイなどのIoT機器も安く充実しています。見えなかったものが見えるようになる、ルネサンス期に入ったと感じます。
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山形県内企業の32.6%が生成AIを活用 — 大企業中心、格差拡大の課題も
全国と比べると、活用は進んでいる印象です。人口がガシガシ減り、学生は大都市圏へ出ていく。使わざるを得ない環境が、かえって普及を後押ししているのかもしれません。だからこそ、地方にはまだ大きな可能性が残っている。ここに答えを出せる会社は強いと思います。
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島田慶資の逆転思考

— 不利な条件を武器に変えた経営者の物語

総括という名の前進

ある、料理に定評のある大型の温泉旅館を支援した時の話です。

前の支援者とどうも方針が噛み合わず、途中から僕が引き継ぐことになりました。
社長と何度も面談を重ね、二つの作戦を立てました。

ひとつは、ゴールデンウィークプランの値上げです。ただし、上げた分は一円も利益にしない。原価率にして20%を22%へ、その2ポイントをまるごと料理の原価に乗せる。「値上げ分を、自分の懐ではなく、お客様の皿に返す」という作戦でした。

もうひとつは、広告をやめることです。代わりに、昔から来てくださっているお客様へ、メールとお手紙で「料理が良くなりました」と直接お伝えする。そして、浮いた広告費は、一番忙しい連休中のスタッフへの寸志に回す。「外に向かって叫ぶお金を、中の人に向ける」という作戦でした。

――こう書くと、「なんだ、当たり前のことじゃないか」と思われるかもしれません。

値上げした分を料理に回す。広告をやめて、現場に報いる。言葉にすれば、確かにその通りです。ですが、この「当たり前」を実際にやれている旅館は、驚くほど少ない。なぜ、できないのか。その答えは、最後にお話しします。

連休が明けて、再訪しました。
ゴールデンウィークの予約は、前年の1.5倍。社長は、明らかに手応えを感じておられました。

そして開口一番、こう仰いました。

「島田さん、効果が出ましたね。次は、どんな新しい仕掛けをやりましょうか」

社長は、もう次の打ち手に向かおうとしていました。新しいことを始めること。それが、社長にとっての「前進」でした。手応えがあるからこそ、早く次へ行きたい。多くの経営者が同じ感覚を持っておられます。

ですが、僕はこう申し上げました。

「次の仕掛けの前に、ひとつだけ。今回、なぜ伸びたのか。それを、一緒に振り返らせてください」

打ち手は、僕と社長で一緒に決めたものです。それでも――いや、だからこそ――「効いた理由」を社長ご自身の言葉にしておくことが、何より大事だと思ったのです。

転換点1 — 「あの値上げは、お客様にどう映りましたか」

僕はまず聞きました。「あの値上げ、お客様からは何か言われましたか」

社長は、少し考えてから言いました。「そういえば……『高くなった』より先に、『料理、良くなったね』と。皿を見て、納得してくださったみたいで」

そこです、と僕は申し上げました。

値上げした分を、一円も懐に入れず、全部お皿に返した。だから、値上げが値上げに見えなかった。「なぜこの値段なのか」の答えが、ちゃんと皿の上にあった。値上げそのものが、広告になっていたのです。

周辺の旅館が同じことをしないのは、できないからではありません。

「値上げした分は、利益にしたい(お気持ちはわかります)」からです。それは選択ではなく、自分で自分に課した制約です。私たちは、誰も入ってこないその空白に、原価率をたった2ポイント動かして入ったのでした。

転換点2 — 「広告をやめて、現場はどう変わりましたか」

次に聞きました。「広告をやめて、浮いたお金をスタッフの寸志に回されましたよね。現場は、どう変わりましたか」

社長は、ふっと表情をゆるめました。「それが、思った以上で。一番忙しい時期なのに、みんな機嫌がいいんです。料理も、前より丁寧になった気がします」

広告は、見知らぬ誰かに向かって叫ぶお金です。集客が落ちれば、もっと大きな声で叫ごうとする。それが常識です。でも私たちは、叫ぶのをやめた。そのお金を「外」ではなく「中」――現場のスタッフに向けた。

スタッフの士気が上がれば、料理もサービスも良くなる。すると、お客様へお送りした「料理が良くなりました」というお手紙が、嘘でなくなる。お客様は、その言葉に応えて、また足を運んでくださる。

転換点1で皿に返した原価も、ここで効いてきます。値上げ分はお客様の皿へ、広告費はスタッフの士気へ。出ていくお金の向きを、二つとも「人」に変えた。それが、1.5倍の正体でした。

転換点3 — 「今おっしゃったこと、紙に書いておきましょう」

ここまで来て、僕は申し上げました。

「社長、いまご自分で言葉にしてくださったこと。これを、紙に書いて残しておきましょう」

社長は、少し不思議そうでした。「もう分かっていることを、わざわざ書くんですか」

「ええ。いまは鮮明でも、次の仕掛けに走り出した瞬間、なぜ効いたのかは霧の中に消えます。そうなったら、今回の1.5倍は『たまたま当たった』で終わってしまう」

社長の手が、止まりました。

僕たちは、二つの作戦を、一枚の紙にT字で書き出しました。左に「効いたこと・なぜ効いたか」、右に「効かなかったこと・次にやめること」。新しい打ち手を足す前に、必ずこの総括を挟む。これが、この旅館の新しい習慣になりました。

社長は「次の新しい仕掛け」こそが前進だと思っておられました。でも、本当の前進は、すでに打った手を振り返り、「なぜ効いたのか」を自分の言葉にすることでした。それができて初めて、次も同じ原則で打てるからです。

「当たり前」を支えるもの

さて、冒頭の謎です。値上げ分を料理に返す、広告をやめて現場に報いる——この「当たり前」を、なぜ、ほとんどの旅館はやれないのか。

答えは、原価が見えていないからです。

原価が分からなければ、値上げの2ポイントをいくら料理に回せるのか、繁忙期の寸志をいくら出せるのか、決めようがありません。多くの旅館では、ここが「だいたい、このくらい」という感覚になる。感覚で決めた打ち手は、現場に「なぜそうするのか」が伝わらず、続きません。その奥には、板前とフロントと経営層が、数字という共通の言葉で話せていない、という根の深い問題が横たわっています。

この旅館が「当たり前」を打てたのは、原価が見えていたからです。僕との毎月の面談で、会計事務所の資料をもとに、管理会計を地道に積み重ねてきました。だから「料理の原価率は20%」と即答できる。だから、値上げ分も寸志の額も、感覚ではなく数字で決められる。打ち手が明快なのは、足元の数値が明快だからなのです。

毎月、数字と向き合う。打ち手のたびに、T字で総括する。——周りから見れば、無駄なことをしているように映るかもしれません。「管理会計なんて、旅館に必要か」と。

でも、その地味で、一見無駄に見える作業の上にしか、明快な打ち手は立ちません。奇人と思われても、果実をきちんと手にできるのなら。それこそが、最も正しい経営なのではないでしょうか。

皆さんの会社は、いま打っている手の「なぜ」を、感覚で語っていますか。それとも、数字で語れますか。

もしかすると、次の一手は、新しい仕掛けではなく、足元の数字を、もう一度きちんと見つめ直すこと、なのかもしれません。

変革者の円卓会議で一緒に考えてみませんか

変革者作家・島田慶資

今号の相談テーマ: 「いろいろ施策を打っているが、何が効いているのか分からない」

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ハンズバリュー代表の島田が、金融専門メディア「ニッキンオンライン」にて連載記事を執筆しました。 第1回「物価高と利益改善」を公開中 今回公開されたのは、第1回「物価高と利益改善」です。物価高が続く経営環境の中で、中小企業

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