事業再生では、金融機関や支援者が「この改善計画は本当に実行できるのか」を確認します。
決算書や試算表だけでは、現場の接客、商品力、原価管理、口コミ、稼働状況までは見えません。そのため、案件によっては面談前後に現場確認や調査レポートの作成が行われることがあります。
この記事では、事業再生の調査レポートで見られやすいポイントと、経営者が金融機関面談前に準備しておきたい説明を整理します。
━━ この記事の著者 ━━
島田慶資(しまだ けいすけ)|ハンズバリュー株式会社 代表取締役。東北6県の温泉旅館を中心に、経営改善・事業再生のコンサルティングを10年以上実施。支援案件は延べ1万件超、補助金等の累計調達支援額は500億円。認定経営革新等支援機関。東日本大震災、令和元年台風、福島県沖地震などの復旧・再建局面でも、事業者の生活と事業継続を守る支援に取り組む。事業再構築補助金・中小企業成長加速化補助金の採択支援実績あり。
この記事の結論
調査レポートは、会社を責めるための資料ではありません。改善計画の数字と現場の実態をつなぎ、金融機関と経営者が同じ前提で再生策を考えるための材料です。経営者は、売上計画、原価、人員、現場の改善課題を自分の言葉で説明できるように準備しておく必要があります。
事業再生の調査レポートとは
事業再生の調査レポートとは、改善計画の前提が現実に合っているかを確認するための資料です。金融機関、再生支援チーム、外部専門家などが、数字、現場、顧客体験、競合状況を整理するために作成する場合があります。
たとえば、計画では客単価を上げる前提になっているのに、現場の商品説明が弱い。稼働率改善を掲げているのに、予約サイトの写真や口コミ対応が追いついていない。このような差を見つけ、改善計画を現実に寄せることが目的です。
現場確認・覆面調査で見られること
業種によっては、一般のお客様として店舗や施設を利用し、現場の実態を確認することがあります。温泉旅館や飲食店であれば、予約時の対応、到着時の印象、清掃、接客、料理、会計、口コミとの整合性などが見られます。
ただし、すべての金融機関が覆面調査を行うわけではありません。重要なのは、調査の有無にかかわらず、経営者自身が顧客目線で現場を見直しているかどうかです。
温泉旅館で見られやすい例
- 予約サイトの写真と実際の客室・料理に差がないか。
- 口コミで指摘されている点に改善の跡があるか。
- 人員不足が接客品質や清掃品質に出ていないか。
- 高単価化の計画に、現場の商品力が追いついているか。
数字と計画で確認されること
調査レポートでは、現場の印象だけでなく、計画数字の現実性も確認されます。売上、粗利、人件費、原材料費、広告費、借入返済、設備投資の優先順位などが、実態と合っているかを見ます。
売上計画
客数、単価、稼働率、販売チャネルの前提が現実的か。
コスト構造
原価、人件費、外注費、水道光熱費の改善余地があるか。
資金繰り
返済、税金、賞与、設備更新を含めても資金が回るか。
経営者が面談前に準備すること
- 直近3期分の決算書、直近試算表、資金繰り表を用意する。
- 売上計画の根拠を、客数・単価・稼働率・販売チャネルに分けて説明する。
- 原価、人件費、固定費の改善策を、担当者と期限付きで整理する。
- 口コミ、顧客アンケート、予約サイト評価など、外部評価を確認する。
- 現場で既に着手した改善と、これから実行する改善を分けておく。
- 金融機関に依頼したい支援内容を、返済猶予、追加融資、条件変更などに分けて整理する。
調査結果を改善に活かす方法
調査レポートで厳しい指摘があっても、それは改善計画を現実に近づける材料です。感情的に反論する前に、事実、解釈、改善策を分けて受け止めます。
金融機関が見たいのは、完璧な会社ではありません。経営者が自社の課題を理解し、数字と現場を結びつけて、改善を継続できるかどうかです。
金融機関面談の前に、数字と現場を整理します
事業再生では、計画書の文章よりも、経営者が自社の現実を自分の言葉で説明できることが重要です。面談前の資料整理、資金繰り表、改善計画の作成を支援します。
