東京の有名コンサルタントには『この旅館はもうダメ』と言われました。
でも今年は、大河ドラマ『天地人』の年を上回る売り上げです(笑)
丹泉ホテル
赤湯温泉の老舗温泉旅館。創業は江戸時代(1800年頃)。その後、明治31年に名前を「丹泉ホテル」に改名。部屋数32、最大収容150人。旅館のコンセプトは「地域の皆様のための常宿」、「気軽に泊まれる温泉旅館」。宿泊者の内訳は、団体と個人で約7対3。
赤湯温泉エリアについて《島田の見解》
赤湯温泉は、その開湯が900年前、平安時代にまでさかのぼる、歴史ある温泉です。しかし、残念ながら、銀山温泉や蔵王温泉ほどにはブランドはありません。2009年には大河ドラマ「天地人」の影響で賑わいましたが、それも期間限定の効果でした。
山形県内の宿泊客は、平成14年以来、この10年で、3割減少しました。つまり県内の観光産業全体が地盤沈下しているのです。赤湯温泉もまた、その影響からは逃れられません。手を打たなければジリ貧に陥るのみです。
ハンズバリュー お客様に聞く
南陽市の温泉旅館、丹泉ホテル 丸森周平氏に、ハンズバリューを活用することになった経緯と、その評価について詳しく聞きました。
ハンズバリューを「集客の右腕」として活用
― 丹泉ホテルでは、ハンズバリューをどう活用していますか。
ハンズバリューは、わたしの「集客の右腕」です。
宿泊客を増やすための施策の企画・立案・実行を、2013年11月以来、総合的にハンズバリューに依頼しています。具体的には、ホームページ作成・更新、PPC広告の立案実行、SEO対策、宿泊プラン作り、アンケート改善、コストダウン提案などを依頼しています。
今年の売上げは、「前年から数千万円増」で着地の見込み
― ハンズバリューの集客支援を導入した成果を教えてください。
今年の売上げは、「前年から数千万円増」、「過去20年で最高」という数字で着地する見込みです。
この数字は、大河ドラマ「天地人」の恩恵で潤おった2009年当時を、すでに上回っています。
丹泉ホテルの集客は、ここ数年、じり貧でした。しかし今は絶好調です。たとえば通常なら閑散期となる8月でさえ、今年は対前年で1.5倍の売上げとなりました。
楽天トラベルで置賜地区ナンバーワンに
当館の利用者は、地元の老人クラブ、会社宴会、忘年会など団体客の皆さんが中心です。その場合、繁忙期は、稲刈りが一段落つく10月から12月となり、逆に、8月の夏休み中は、「やや閑散期」となるのです。
しかし今年は、その閑散期の8月に、楽天トラベルで、「実泊数における置賜地区ナンバーワン」に輝きました。楽天トラベルの他、じゃらんや自社ホームページからの集客も順調だったので、売上げは対前年で1.5倍に伸びました。先付け予約も、8月は、前年比310%です。
この数字には私も驚きました。
あえていうならば、繁忙期の数字を伸ばすだけなら、特別な知恵を使わずとも、力技、たとえばPPC広告の出稿量を増やすことなどだけでも何とかなります。しかし、閑散期の売上げを1.5倍にするのは大変なことです。島田さんの「知恵の勝利」です。
去年までは、閑散期の集客対策といっても、特に策もなく、「こりゃ『ゆこゆこ』に頼るしかないかな、手数料高いんだけど…」とでもなるところでした。しかし、今年からは、自館ホームページを使って自力で集客できます。手数料を引かれない、真水の収益が得られます。
実は、2年前に、東京の有名旅館コンサルタントに、当館の経営について放言をされたことがあります。今は、「どうだ、見たか!」と言い返してやりたい思いです。
有名コンサルタントの見解
― 「有名旅館コンサルタントに放言をされた」とは具体的には。
その頃、当館は、ジリ貧状態を打破するため試行錯誤していた時期で、その取り組みのひとつとして、数々の旅館を再生させたという、東京の有名コンサルタントに会いに行きました。
しかし、その人の態度や話の内容には困惑させられました。基本的には、こちらの話は聞きません。言うことは「オレに任せておけば大丈夫」の一点張りです。
「今までの売上げは偶然。ぜんぶ運」、「もう売上げの伸びしろはない。何をやってもダメだから」とも言われました。
しかし、売上げの伸びしろがないのに、どうやって業績を好転させられるのか、疑問に思ったので聞いてみたところ、「固定費と変動費を削減しなさい。それから設備を改装しなさい」という回答。ちなみにコンサルティング費用は約1000万円(東京・山形間の新幹線代もこちら負担)とのことでした。
正直言って、あきれました。売上げが伸ばせない状態で、1000万円のコンサル費用をどこから捻出しろというのか。また、再建の道筋も「固定費と変動費の削減。そして設備改装」など、その程度なら私でも思いつきます。1000万円に値するアイディアとはいえません。
そのコンサルタントは、丁重にお断りしました。 代わりに起用したのがハンズバリューです。
ハンズバリューを知った経緯
― ハンズバリューのことはどこで知ったのですか。
ある日、ハンズバリューから、飛び込みで電話営業がありました。ふだんは営業電話は相手にしないのですが、聞けば、「彩花亭 時代屋」さんの集客支援をしており、成果も出ているといいます。
あの「時代屋」で実績のあるコンサルタントなら、少なくとも話を聞く価値はあるだろうと考え、まずは会うことにしました。
島田の話への印象
― 島田の話への印象を教えてください。
東京のコンサルタントが否定的で落ち込む話しかしなかったのに対し、島田さんは「設備改装は必要ありません。丹泉ホテルの『今ある良さ』をネット上で伝えるだけでいい。それで必ず宿泊客は増えます」というポジティブで前向きの話をしてくれました。
また宿泊客増を実現するためのプランも、具体的かつ納得のいく内容でした。態度も情熱的で真剣味がある。これは良さそうです。
念のため「時代屋」の冨士社長に、島田さんの仕事ぶりや人柄について直接ヒアリングしました(実は冨士社長は私の父の同級生なのです)。すると、「島田さんは最高だよ」という答が返ってきました。
もう迷うことはない。丹泉ホテルの営業再建は島田さんと一緒にやる、そう決めました。2013年11月のことです。
ハンズバリュー 島田に聞く
丹泉ホテルの集客支援にあたり、具体的にとったアクションは次のとおりです。
- スタッフ全員で泊まる
- 『もったいない』さがし
- 「グッドポイント40」
- 既存顧客の分析
- 施設コンセプトの再設定
- 価格の再検討
- 米沢牛の扱い
- 他地域の宿泊施設のアイディアを参考にする
- アイディアは参考にしても価格は真似ない
- プランの見せ方の注意点
- 外部ブログを内部ブログに切り替える
- ブログに『お客様の声』を盛り込む
- メールマガジンの発行
- PPC広告の強化
- 顧客別、ニーズ別に専用ページを制作した
- ペット連れ客向けページの最適化
- 3つの特典ポイント
- ファーストビュー強化
- 写真の改善
- フォトギャラリー強化
- 担当者と仲良くする
- 楽天トラベル内ページの強化
- 必ず勝てる広告に出稿する
- ネットエージェントのクチコミ評価向上
- 「宿泊アンケートの改善」
事前調査
1. スタッフ全員で泊まる
ハンズバリューでは、宿泊施設のコンサルティングをするときは、まずスタッフ全員で、その施設に宿泊することにしています。
施設のサービスレベルは、実際に体験しないと本当の良さがわかりません。また、全員で泊まることで、施設の良さをみなで「実感として共有」できます。
旅館のマーケティングには写真が重要ですが、実際に宿泊すれば、「いつ、どの場所を撮れば旅館の強みが最も効果的に表現できるか」が、リアルに分かります。
文章についても、たとえば食事が美味しいことをホームページに書く場合でも、泊まって食べて、旅館の空気を吸っているからこそ迫力が出ます。
2.『もったいない』さがし
「宿泊して自分たちが実感したこと」と「ホームページ内での表現」を比べて、「これはもったいない…」と思えることを見つけていきました。たとえば次のようなことです。
- 三の間付き貴賓室を(ネットで)売っていなかった。
→ 売り込まない理由特になし。ただちに宣伝するべきと判断。 - 旧館の古い部屋はレトロ感がある。少し修理すれば売れる部屋だと確信。しかしホームページで紹介していなかった。
→ ただちに紹介するべきと判断。 - 各部屋の内お風呂は温泉が流れる。しかしホームページでそれを言っていなかった。
→ ただちに言うべきと判断。 - 自社ホームページやネットエージェントに掲載している写真が古く、画質も悪かった。これでは旅館の良さを伝えられない。
→ 写真は全部撮り直しが必要と判断。
3.「グッドポイント40」
「グッドポイント40」とは、施設の強みを、とにかく40個、書き出してみるという作業です。この手法は、島田が東京でのセミナーに参加したときに、ある有名Webコンサルタントから学びました。
周平さんと一緒に、苦しみながらも、とにかく40個の強みを洗い出しました。
取り出した40個の強みは「単なる現実描写」から「顧客が価値を感じる言葉」に変換します。例えば「宿が街なかにある」という現実描写は、顧客本位の言い方、たとえば「国道から車で3分」、「観光スポットまで歩いていける」などの言葉に換えます。
最終的には、「島田が顧客なら、これには価値を感じるなあ」というポイントを10個に絞り、顧客言語に変換して、ホームページトップに掲載しました。
事前分析・計画
1.既存顧客の分析
丹泉ホテルに宿泊するお客様は、いったい何に価値を感じているのか。周平さんと一緒に答えを考えました。とりあえず次のようにまとまりました。
顧客種別 | その顧客にとっての丹泉ホテルの価値 |
---|---|
ビジネス客 | 宴会が安くできる。 |
老人クラブ | 安い。昔から使っている。馴染み |
観光客 | 安く泊まりたいけど民宿は嫌という層には魅力的 (地区の温泉旅館でも最安) |
ペット連れ | 理由不明。 なぜか単価の高いプランで宿泊してくれる。なぜ? |
この中で不思議だったのはペット連れ客でした。宿泊単価の安いお客が多い中、なぜかペット連れ客だけは、高単価です。
この疑問に答えを出すべく、周平さんに再度ヒアリングしたり、ペット客がよく使う部屋を調べたりした結果、「丹泉ホテルは、ペット連れOKの旅館としては、山形県でも一二を争う、上級の部屋を提供している」ことが分かりました。
この事実を知ったときは、「これは戦える材料が見つかった!」と嬉しく思いました。
2.施設コンセプトの再設定
丹泉ホテルの基本コンセプトである、「気軽に泊まれる温泉旅館」は、少し見直す必要があると考えました。
このコンセプトは、「リピーターの地元団体客」、つまり老人クラブやビジネス宴会客などに対しては、適切だと思います。地元客は、安くて気軽に使える旅館でないと、日常的に利用できないからです。 しかし、県外からの旅行客にとっては、「いつでも気軽に泊まりに来てください」と言われても、そうそう気軽に行けるものでもありません。赤湯にリピートするとしても、気分を変えて、別の温泉旅館に泊まりたいと思うでしょうし。
島田としては、県外の観光客に対しては、「コストパフォーマンス(費用対効果)の良い宿」として、まだお金に余裕が無い若いカップルや新婚夫婦などにアピールする方が良いと考えました。
地元客にとっては、マイナス要素となる「施設の古さ」も、若年層の観光客にとっては「レトロ感」として味わえます。たとえば「おばあちゃんの家に遊びに来たようなレトロ感ある部屋」という演出も可能です。対象顧客を精密に分析したことで、矛盾ない筋の通った戦略が作れました。
3.価格の再検討
県外からの観光客向けの宿泊プランについては、提供している価値に比べて宿泊価格が安すぎると思われたので、1割~2割の値上げを提案しました。
リピートしてくださる地元の団体客には、お得意様価格で対応するのは正しいと思います。
一方、県外からの観光客はリピートは基本しません。
無理な割引価格ではなく通常価格で提供することが理に適っています。
ホームページ上で値上げを告知すると、地元客の心証が悪くならないか?
県外からの観光客への値上げは、楽天トラベルやじゃらんなどネットエージェントのサイトの中で、プランを使って行うので大丈夫です。
地元のリピート客は、そういうページは見ませんし。
また、丹泉ホテルの宿泊料金はもともと格安なので、値上げしても、まだ割安です。
緻密に考えるならば、値上げを恐れる必要はありません。
4.米沢牛の扱い
ご存じのとおり「米沢牛」は置賜地区の重要な観光資源です。
山形に旅行に来た顧客は「せっかくだから、ブランド牛である、あの米沢牛を食べたい」と考えます。
実際、丹泉ホテルでも米沢牛関連のプランに人気が集まっていました。
もちろん米沢牛それ自体は、どこの旅館でも出せるので、「丹泉ホテルの特色」にはなりえません。しかし、そこは目立った者勝ち、SEO対策やPPC広告でで露出を高めるだけでも競合と戦えるはずです。PPC広告のキーワードは、顧客のニーズに応えて、ズバリ「米沢牛」。それをやれば売れる、そんな予感がありました。
宿泊プラン
1.他地域の宿泊施設のアイディアを参考にする
宿泊プランを考えるときのコツは、「他地域の宿泊施設を研究し、そこで売れているプランを取り入れること」です。
新しいアイディアは不要です。「それ、おもしろいね!」、「今までにない発想!」、そいうプランは、たいていニーズがありません。ニーズを創造してはいけない。効率が悪いです。
特に当たらないのが体験型宿泊プラン。「山歩きプラン」、「工芸品作るプラン」、「たくあん漬けるプラン」、経験上、いっさい当たりません。
そうではなく、他の旅館で売れているプランをマネし、すでにあるニーズに対応しましょう。これこそ即効性のある打ち手。
丹泉ホテル様には、「赤ちゃん温泉デビュープラン」、「大人のデートプラン」を提案しました。現在、どちらのプランともきちんと宿泊客が取れています。特に温泉デビュープランは女将さんが驚くほどです。
2.アイディアは参考にしても価格は真似ない
他地域の宿泊プランを参考にするとき、一点、注意事項があります。それは「プランは参考にしても良いが、価格をマネはいけない」ということです。
あくまで自館の価格帯を守りましょう。1万円前後の宿泊プランをメインにしている旅館に、とつぜん5万円の宿泊プランが出てくると、お客が驚いて購買意欲を下げてしまいます。スーパーで高級時計を売ってはいけません。
3.プランの見せ方の注意点
その他、宿泊プランの作り方、見せ方の注意点は、次の通りです。
- プランの数を増やしすぎてはいけない
プランの数はほどほどにしましょう。プラン数が多すぎると客が迷って決められなくなります。島田が支援を開始した時点で、丹泉ホテルにはプランが50個ありました。相談の上、これを30に減らしました。 - 売れていないプランはやめる
仮に売れていないプランでも、存在する以上は、調理場や仲居さんは対応できるよう準備しなければいけません。こうした「無意味な努力」が発生しないよう、「試してみたけど売れなかったプラン」は、すみやかにやめましょう。 - 調理場や仲居さんに負担をかけるプランは作らない
アイディア先行で、裏方のオペレーション負担を無視すると、現場に不満が溜まります。複雑なことをしなくても、客が呼べるプランは作れます。同じ宿泊単価ならオペレーションは単純な方が良いです。 - 「基本宿泊プラン」を作る。
- プランが複数個あるとお客は迷います。そんなお客のために、「いい部屋に泊まるプラン」、「普通の部屋に泊まるプラン」のような、迷わず選べる「基本プラン」を作っておけば、プランが選びやすくなります。
- プランの並べ方はニーズ順に
プランは、ニーズが高い順に並べましょう。プランの並び順にもストーリーが必要です。丹泉ホテルでは、島田が指摘するまで5000円の最安プランが上位表示されていました。これでは宿泊単価が下がるだけです。そのプランは一番下に移動し、最上位には「基本宿泊プラン」を表示しました。こうすれば「迷ったときには基本プランで」というメッセージが顧客に伝わります。たったこれだけのことですが、実行したところ宿泊単価が上がりました。 - 宿泊プランの説明文の強化
宿泊プランの説明文は、できるだけ詳しく書くよう指導しました。「浴衣を貸している」、「無料駐車場がある」など、「そんなの当たり前でしょ」ということでも、あえて書きます。書かないとお客様にはわからないのです。 - 説明文から『ペットOK』の文言を【削除】する
島田が指摘する前は、文中に「ペットOK」と書いてありました。この文言は、ペット連れ客には魅力的ですが、「一般のお客様」には逆効果です。ペットに関心のない普通の宿泊客は、「ペットOKの部屋」には泊まりたくないからです(部屋が汚いように思える)。この文言は削除してもらいました(ペット連れ客へのアピールは、ペット連れ宿泊客向けの専用ページで行えばよいわけで)。 - 説明文は、文字数制限枠いっぱいまで長く書く
宿泊プランの説明文は、制限文字数いっぱいまで長く書きましょう。宿泊特典、お風呂の良さや、ホテルの紹介文など、あらゆる情報を盛り込みます。プラン一覧画面が長くなるデメリットはありますが、読み飛ばせるので問題ありません。ネットエージェントに来た見込み客の行動は、「検索 ⇒ 宿泊プランのページにヒット ⇒ 予約するか検討する」となるのが普通です。つまり、旅館のホームページは見ずに、その場の説明文だけ読んで、予約するしないを決める人が多くいます。ということは、やはり説明文は、詳細に書かねばなりません(※ 説明文については、島田から、原案(ひな形)を提供しました。 - 楽天トラベル向けの写真の最適化
楽天トラベルに写真を掲載する場合、500ピクセル四方の正方形でないとキレイに表示されないという制限があります。写真はいちいちその仕様に直しました。なお楽天トラベルでは写真をクリックした場合、拡大はされますが、説明文は表示されなくなります。そのままでは見込み客に不親切なので、写真そのものに「小さな説明文」を入れて、読めるようにしました。こういうことは、細かいけれど大切です。面倒がらず、やるべきです。
ホームページのアクセス増
1.外部ブログを内部ブログに切り替える
丹泉ホテルのブログは、従来は外部ブログを活用していましたがこれを自社ホームページの内部にブログを取り込む形になるよう、変えてもらいました。
理由は、内部ブログの方が「SEO面で有利」であり、かつ「予約画面に誘導しやすい」からです。
まず「SEO面」ですが、Googleは、「ページ数」が多いホームページを上位表示させる傾向があります。つまり、1000ページのHPと、10ページのHPなら前者の方が有利です。ホームページ内部にブログを持てば、ページ数を嵩増しすることができ、かつ更新頻度も頻繁にできるので、SEO上、有利です。
なお、ブログの内容は必ずしも本業と関係あるものでなくてもかまいません。丹泉ホテルでは、周平さんが、趣味の「ラーメンブログ」を書いています。これでSEOに十分、貢献できます。
次に「予約画面への誘導しやすさ」ですが、外部ブログの場合、「ブログ記事 ⇒ (左側の小さなボタンで)自社ホームページ誘導 ⇒ トップページ ⇒ 予約一覧 ⇒ 予約」という流れになります。予約までの道のりが長いので途中で顧客が脱落する恐れがあります。
一方、内部ブログなら、「自社ホームページ内のブログ ⇒ 予約一覧 ⇒ 予約」というように、アクション回数が少なくて済むので、予約につながりやすくなります。
2.ブログに『お客様の声』を盛り込む
ブログに、宿泊客の「お客様の声」を書き入れる試みも始めました。「お客様の声」には、真剣に宿泊を考えている人が検索するキーワードが含まれているからです。そのキーワードをホームページに取り込むことでアクセス数が増えると期待できます。
アクセス数の高いブログ記事には、そこにお部屋や料理ページへのリンクを設けて、少しでも自社ホームページへ誘導できるよう図っています。具体的には、「ブログ ⇒ 料理ページ ⇒ ページ末尾の予約フォーム ⇒ 予約」という流れを狙っています。
この試みを行ったとしても、それが直ちに大幅な予約増につながることはないでしょう。「お客様の声」の検索キーワードは、一部の人だけにアピールする「ニッチなキーワード」だからです。
しかし、それでもなお、この「お客様の声によるロングテールSEO」は、やる価値があります。こちらが想定していない「意外なキーワード」での予約が見つかった場合は、そのキーワードでPPC広告を打てば良いからです。マイナーなキーワードなので、費用は格安、ライバルも来ない、それでいて高コンバージョン率も見込めることになります。
3.メールマガジンの発行
宿泊客向けのメールマガジンを始めました。目的は、「顧客の頭に丹泉ホテルを刷り込むこと」です。どこに旅行に行こうかと考えたときに、あ、そういえばと思い出してもらえればいいなと。
メルマガの内容はラーメンのことや館内の紹介。売り込み臭はなし。ネタはブログから引っ張ってきます。文章を一から書くのは大変なので。
地道な取り組みではありますが、このメールマガジンからホームページにやってくる顧客もいます。継続が大事です。
4.PPC広告の強化
PPC広告はGoogleとYahoo!の両方に出しています(※ 通常広告のみ。ディスプレイ広告はなし)。
広告を強化した結果、「見込み度の高いキーワードを経由してのアクセス数」が3カ月で2倍に増えています。このことは、今年の売上げ増に大きく貢献しています。
やはりSEOで待っているだけではなく、自ら広告を出して仕掛けていく必要があります。
ホームページ強化
1.顧客別、ニーズ別に専用ページを制作した
「赤ちゃん温泉デビュープラン」や「ペット連れ宿泊客向けプラン」などについては、それぞれ「専用ページ」を設けました。
家族旅行プラン、誕生日プラン、赤ちゃん温泉デビュープランを同じページでごちゃまぜに表現するのは、ホームページを見に来る人に対して不親切だと考え、おのおのページを分割・独立させました。
自分がほしい情報しか読まないのがネット客の特徴です。赤ちゃんと宿泊したいお客様は、カップル向けページに興味はありません。逆も同じです。
特に「ペット客向けプラン」に関するページは、ボタンを小さくして、わざと分かりにくくしました。一般のお客様は、ペットの泊まる宿に泊まりたくないだろうと考えたからです。ペット客向けのページには、検索でダイレクトに呼び込めば良いと考えました。
2.ペット連れ客向けページの最適化
「ペット連れ客向けのページ」には、「ペット 宿泊 山形」などのキーワードを通じてダイレクトに誘引します。呼び込んだ先のランディングページは、特に気合いを入れて作りました。
具体的に工夫した点は次のとおりです。
- 「ペット連れであっても、山形県内最高クラスの部屋に泊まれること」、「5種類の部屋が選べること」を強調。
- 直筆の「お客様の声」を掲載。見込み客の背中を押す。
- 宿泊した犬の写真を掲載。「本当にいっしょに泊まったんだ感」を演出
- 部屋食であることを強調。犬連れ客はペットが心配なので、放置してひとり食事にいくことができない。だから部屋食に価値を感じる。
- ページの末尾には必ず予約フォーム。この流れが大事。
以上、ペット連れ客向けのページの例ですが、他のプランのランディングページもこれと同様に、よく工夫して作りました。
3.3つの特典ポイント
丹泉ホテルの集客経路は、「楽天トラベル」、「じゃらん」、そして「自館ホームページ」ですが、できれば、「手数料無しの真水の収益」が得られる自館ホームページからの予約を増やしたいところです。
しかし、残念ながらお客の方は、楽天トラベルなどネットエージェントで予約することを好みます。そちらで予約すればポイントがつくからです。
これに対抗するには、ポイントを上回る、何らかの魅力ある特典を用意しなければいけません。丹泉ホテルの場合は、「チェックイン14時~、チェックアウト11時」、「生ビール又はジュース一杯プレゼント」、「地元温泉の無料入浴券プレゼント」を用意しました(2013年10月現在)。
特典の一つ、「温泉入浴券プレゼント」は、実は、昔から実施していたサービスです。内容は、近くの共同浴場の入場券であり、100円の価値にすぎないので、旅館側としては、わざわざアピールするほどのことでもないと思っていたようです。
しかし、それではもったいない。ここは物は言いようです。「地元銭湯の無料券」ではなく「地元温泉の無料入浴券プレゼント」という表現にすればよいのです。同じことでも表現を変えれば、受け取る側の「感じる価値」も変わります。
特典を提供するときのコツは、「1つではなく、3つ提供すること」です。特典が3つも4つもついていると、それと楽天ポイントのどちらトクなのか、考えるのが面倒になって、結局、自館ホームページで予約してくれるからです。
島田は、この発想(技術)を、某有名テレビショッピング番組から学びました。
4.ファーストビュー強化
ファーストビューとは、ホームページの一番最初の画面のことです。
何事も第一印象が肝心。良いファーストビューを作れれば、「ここに泊まりたい!」と一目で思ってもらえます。
具体的にはファーストビューの中に、電話番号、宿の特長、予約特典、ホームページの主要メニューなど全ての情報をコンパクトに収めます。
丹泉ホテルのホームページでは、特に次のことに気をつけました。
- トップのフラッシュ動画に季節感を出す。強みがわかるストーリーにする。
- PPC広告との連動性を強化する。PPC広告で謳っている宣伝文がトップページで表現されていることが必要。
- 電話番号を分かりやすく大きく書く。
- 「予約3大特典」は見やすい位置に。特典の下には、すぐに予約フォームを置いて、スムーズに導けるように。
- グローバルメニューには宿泊予約に必要な情報(ボタン)だけを置く(※ わかっていない温泉旅館は、地域の観光案内などを載せたりします)
- グローバルメニューに「お客様の声」ボタンを設ける。
- グローバルメニューに「資料請求」ボタンを設ける。
(※ 資料請求した顧客は高確率で予約します。おばちゃんがガストでパンフを持ち寄って旅行先を決めているイメージ)
以上のことがファーストビューに含まれている必要があります。これらの情報が盛り込まれていないと詳細ページを読む気力がわきません。
5.写真の改善
見込み客の「泊まりたい!」という気持ちをかき立てるために、写真はとても重要です。
以前のホームページに載っていた写真は、正直、イケてませんでした。島田はプロカメラマンではありませんが、「販売促進のための写真」には自信があります。徹底的に撮り直しました。
部屋の写真、料理の写真もぜんぶ撮り直しました。「キレイな写真」ならばプロカメラマンの方が上手でしょう。しかし必要なのは「泊まりたくなる、迫力のある写真」です。
島田は、撮影前、撮影中、撮影後に顧客にヒアリングしながら、施設の強みが生きる写真を撮ります。強みを生かすために、設備のレイアウトを変更して撮ることもあります。こういうことはプロカメラマンよりも、島田の方が得意だと思います。
良い写真を撮るために機材にも投資しています。これまで、かれこれ100万円はつぎ込みました。
島田が撮影した写真の例
プロカメラマンの写真との比較
プロカメラマン撮影
島田撮影
ネットエージェント対策
1.フォトギャラリー強化
楽天トラベルやじゃらんに来た顧客は、「フォトギャラリー」のコーナーは必ず見ています(このことは、ネットエージェントサイトの勉強会で教えてもらいました)。
丹泉ホテルのフォトギャラリーには島田が撮影した写真を最適化して掲載しました。
2.担当者と仲良くする
楽天トラベルの担当者には、「頑張って販売したい」と伝え、仲よくするよう心がけました。
担当者を味方につけると、エージェントサイト側で情報をくれたり、無料の広告枠を教えてくれたりします。
ここで大事なことは「お願い営業」をするのではなく、「やる気を、態度で示す」ことです。
ネットエージェントも暇ではないので、積極的ではない旅館や、物乞いのようなお願いは、相手にしてくれません。
3.楽天トラベル内ページの強化
楽天トラベル内のホームページを、自社ホームページと同じコンセプト、外観で作成しました。
単にコピーしただけじゃないかと思うかもしれませんが、楽天トラベルでは、データ容量に制限があるので、見た目ほど簡単な作業ではありません。
4.必ず勝てる広告に出稿する
楽天トラベルの中には、「ここに広告を出せば、必ずお客が来る」という必勝の広告があります。
別の旅館でもこれを使って成功しました。丹泉ホテルにもさっそく出稿してもらいました。
5.ネットエージェントのクチコミ評価向上
ネットエージェントのサイトには、その旅館に泊まった宿泊客からの「クチコミ評価」の欄があります。
クチコミ評価は、たいてい5点満点ですが、この評価点が4.5点を超えると、ネットエージェントからの成約率が爆発的に向上することが、すでに分かっています。
丹泉ホテルでは、当面の目標は4.3点に置いています。
クチコミ評価の評点を上げるには、満足度の高そうなお客様に「アンケート書いていただければうれしいです」と声かけすることが重要です。
これをやれば評価点は必ず上がり、やらないと必ず下がります。
なぜかというと、クチコミというのは、基本的に悪口しか集まらないからです。
ネットにクチコミを書くというのは、そもそも不自然な行為で、よほどのモチベーションがないとやりません。では、どんな時ならアンケートを書く気になるか。それはイヤなことがあって、その憂さを晴らしたいときです。
満足度が高かったからクチコミに書き込むという人は少なく、不満があったからクチコミに書き込むという人は多い。ということはクチコミ評点は、放っておくと必ず下がります。
これを防ぐには、満足度の高そうなお客様に「アンケート書いてくださいね」と声かけする他ないのです。
その他
宿泊アンケートの改善
「宿泊客へのアンケート」は、次の打ち手を考えるための重要な材料です。継続的に集める必要があります。
丹泉ホテルでは、宿泊アンケート自体は以前から実施していました。しかし、回収率が悪かった。
さっそくアンケート用紙を見せてもらいましたが、確かにこれだと回収率は上がらないなと思いました。
島田が感じた問題点は次のとおりです。
- 枚数が2枚。質問が多すぎて、書く方がうんざりする。
- アンケートを原紙をコピーして作っていた。印刷がかすれて汚かった。
- アンケートを置いている場所が部屋の隅で目立たなかった。
- アンケート用紙の下敷きにホコリが溜まっていて、触りたくないような汚れだった。
- 白い紙だったので目立っていなかった。
そこで、島田にて新たに宿泊アンケートを作成しました。気を付けた点は次のとおりです。
- 枚数を1枚に。質問数はほどよく。
- ワードファイルで作ったので、プリンタから出力できる。美しい。
- ワードなのでアンケート項目の変更も簡単。
- アンケート用紙は、目立つよう、ベランダのテーブルの上に置いた。
- ホコリが溜まっていた下敷きは全部捨てた。
- アンケート用紙を黄色い紙にした、目立つようにした。色をつけたことで、事務用品くささもなくなった。
- メールマガジンの購読申し込み項目を追加した
こうした改善を施した結果、アンケートの回収率は3割以上、向上しました。
アンケートを有効活用するコツは、「褒められた強みは伸ばし、批判された弱点は無視すること」です。
お客が指摘するのは、往々にして「潰せない弱点」であり、これは無視するしかない。
そもそも弱点を潰しても、平均点的な宿泊施設になるだけで、差別化がはかれませんし。
今後の計画
今後は、「宿泊プランの拡充」、「定番プラン以外の、毎月更新される限定プランの展開」、「PPC、SEOの強化」、「スマホ・ホームページの制作」、「お客様の声の強化」などを計画しています。
先輩ユーザーからのアドバイス
― <最後に、再び周平さまに質問です。今後、島田を活用することを検討している温泉旅館向けに、「島田をフル活用するためのコツ、ツボ」を教えてください。
島田さんの最大の強みは、「経験を糧にする力」です。すべての施策が成功するわけではありませんが、失敗したときも、原因を分析し、悔しさをバネにし、必ず、次のプランにつなげてくれます。島田さんと一緒に仕事をすれば、自分も共に成長できます。
もう一つ、アドバイスとしては、島田さんは、旅館のコンサルティングは「1エリア、1旅館」に限定しているそうです。検討している人は、早く頼んだ方がいいと思います(笑)
島田さん、これからもよろしくお願いします。共に成長していきましょう!